IROCO

Salone del Mobile 2026:ミラノで見えた空間デザインの現在地

今年のSalone del Mobileでは、個々のプロダクトを中心とした見せ方ではなく、空間全体を軸として、一つの体験として構成する「空間的思考」へのシフトがより明確に感じられました。 各ブランドは家具単体を展示するのではなく、素材、照明、フォルムを統合した一貫性のある空間演出によって、ブランドの世界観を表現していました。 IROCO Designとして...

ミラノサローネ

今年のSalone del Mobileでは、個々のプロダクトを中心とした見せ方ではなく、空間全体を軸として、一つの体験として構成する「空間的思考」へのシフトがより明確に感じられました。 各ブランドは家具単体を展示するのではなく、素材、照明、フォルムを統合した一貫性のある空間演出によって、ブランドの世界観を表現していました。 

IROCO Designとしても、これは業界全体の大きな変化を示していると感じています。クライアントはもはや家具を単独で選定するのではなく、空間全体のアイデンティティを構成する要素として家具を捉えるようになっています。

 

 

新作コレクション & プロダクトローンチ

IROCO Designが注目したブランドの多くから、こうした流れを反映した新作コレクションが発表されました。

 

Punt Mobles – キャビネットブランドから空間提案へ

Punt Moblesは、従来のキャビネットシステム中心の展開から、より幅広い家具提案へとコレクションを拡張していました。Foster & Partnersによる「Column Table」、Victor Carrascoによる「Garbi Sofa」、Monica Armaniによる「Gonna Chair」は、Puntが収納家具ブランドの枠を超え、テーブル・チェア・ソファまで含めた包括的なコレクションへ進化していることを示しています。

クリーンなラインや洗練された素材使い、そして力強いフォルムによる建築的なデザイン言語は一貫して保ちながら、住宅、ワークプレイス、ホスピタリティなど幅広い空間への統合性を高めていました。 これはPuntがキャビネットデザインから「トータルインテリアソリューション」への明確な移行を感じさせる内容でした。

 

MIDJ – 2026年 新作コレクション

MIDJの2026年コレクションは、住宅空間からコントラクト空間まで対応する「柔軟性」「カスタマイズ性」「適応性」が強く打ち出されていました。 新作の「Cover.1」「Wrap.1」「Leo」「Yak」 は、それぞれ現代的なライフスタイルに対応するシーティング、テーブル、モジュラーシステムを提案しています。

Cover.1とWrap.1は、柔らかなフォルムや異素材 の組み合わせ、ホスピタリティ空間に適した機能性が特徴です。一方Leoは、軽やかな印象を持ちながらも構造ディテールにこだわったテーブルシリーズとして展開されていました。Yakは、空間や用途に合わせて自由に構成を変えられるモジュラーソファシステムとして紹介され、現代の多様な空間ニーズに対応する柔軟性を表現しています。

全体として、MIDJらしい快適性、素材表現、そして柔軟なデザインアプローチが一貫して感じられるコレクションでした。 

 

 

Pedrali – Gentle Habitat

Pedraliは、DWA Design St構造体をあえて見せるデザイン、ニュートラルな素材使い、統一感のあるマテリアルパレットによって構成された空間は、屋内外をシームレスに行き来するような流れを生み出していました。 

照明、テキスタイル、控えめなカラーアクセントを通して新作コレクションを際立たせながら、インテリア・アウトドア双方に対応する耐久性と統合性を重視したPedraliの姿勢が表現されていました。

 

Arper – AOM, Cila, Catifa RE

Arperは、既存コレクションを進化させた複数の新作を発表しました。 

AOM:柔軟なコラボレーションや中間領域に対応するモジュラーシーティング 

Cila(アップデート):ミーティングスペースからラウンジまで横断的に対応するハイブリッド仕様へ改良

Catifa RE:アイコニックなCatifaシリーズをベースに、再生素材とサステナブルな生産プロセスを導入した新モデル 

これらの新作は、変化するワークプレイスやホスピタリティ空間に向けた、Arperの「適応性」と「持続可能な素材開発」への継続的な取り組みが感じられました。

 

 

ミラノ市内で展開されたインスタレーション & ブランドプレゼンス

Salone del Mobileの魅力は、展示会場だけに留まりません。ミラノデザインウィーク期間中、市内各所で展開されるインスタレーションもまた、ブランドの思想や空間表現を体感できる重要な要素となっています。

 

Smarin at BASE Milano

BASE Milanoでは、Smarinが「RE-U Construction System」をライブ木工セッションとともに展示し、Ground Hallを柔軟かつ変化し続ける空間へと変貌させました。

オーク材の端材を活用した可逆性の高いシステムによって、シーティング、デスク、パーテーション、ステージなど多様な構成の実現が可能となります。ひとつつのシステムが空間の用途に応じて柔軟に変化する様子を通して、現代空間に求められる「柔軟性」「耐久性」「実用性」を表現していました。 

 

Kartell at Superstudio Più

Kartellは、素材実験と透明感のあるデザイン表現を引き続き打ち出していました。再生プラスチックの新たな活用方法と大胆なカラー展開を通じて、「革新性」と「アクセシビリティ」を両立するブランドポジションを強く印象づけていました。 

 

Audo Copenhagen at Grand Café

Audo Copenhagenは、北欧的なミニマルさと温かみのあるホスピタリティ要素を融合させたインスタレーションを展開しました。豊かな素材感 、落ち着いた色調、レイヤー状に構成された照明演出によって、家具が単なる機能ではなく「空間の雰囲気づくり」に大きく寄与することを示していました。 

 

 

IROCO Designが見る空間デザインの現在 

Salone del Mobile 2026を通して特に印象的だったのは、家具が単体プロダクトとしてではなく、「空間全体を構成するシステム」の一部として提案される傾向がより顕著になっていました。 

機能性だけではなく、空間の雰囲気、体験価値、感情的な印象まで含めた総合的な空間づくりが重視されており、これはホスピタリティ、ワークプレイス、ライフスタイル空間において今後さらに重要になっていくと考えられます。 

デベロッパーやデザイナーにとっても、統一感があり、柔軟に変化へ対応できる空間をキュレーションしていくことが、ますます求められていると言えるでしょう。